生活困窮者自立支援制度とは?どんなことを相談できるの?

生活困窮者自立支援制度とは?どんなことを相談できるの?

生活困窮者自立支援制度

生活困窮者自立支援制度で相談できることとは?

憲法25条1項には、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」とあり、国は生活支援や生活保護の施策を実施してきました。最近はさらに一歩踏み込んで、平成27年4月施行の生活困窮者自立支援法に基づき、生活保護に至る前の状況にある方(生活困窮者と言います)を支援する「生活困窮者自立支援制度」が始まっています。

今回は、生活困窮者自立支援制度についてご紹介します。

生活困窮者自立支援制度とは

生活困窮者自立支援制度とは

生活保護受給者数が平成27年度には216万人に達し、高齢者世帯のみならず、働き盛りの世帯も増加傾向にあります。これを踏まえ、生活保護受給者になる前の生活困窮者と向き合い、その原因を取り除くために必要なこと、すべきことは何かを提案し、解決の手助けをする専門の支援員が他の機関との連携もとりながら、生活困窮者が社会に参加し活躍できるよう支援するために作られたのが、生活困窮者自立支援制度です。

この制度は、生活保護から脱却した方が再び生活保護者にならないように支援する制度でもあります。すなわち、これまでは求職者支援制度により、いわゆる失業保険(基本給付)を受給しながら就職活動をする、という構図での方策が実施されてきましたが、これに加えて就職活動を行うための基盤が弱い方を継続的に支援することで、経済的・社会的自立につなげようとするものです。

制度の目標

この制度では、現状を改善したいという生活困窮者自身の意欲に寄り添って支援することで、本人の選択、本人の決定で対策を実行し、経済的・社会的自立を成し遂げることで、自分自身を肯定的にとらえ、自信を取り戻してもらうことを目標としています。また、専門の支援員が地域のネットワークを構築、利用し生活困窮者の活躍の場を確保しつつ、生活困窮者と地域が互いに支えあうことができる環境づくりを目指しています。

支援の実施方法

生活困窮者が抱える課題は多くの要素が複雑に絡んでいることが多く、一面的な支援の取り組みでは解決ができないことを認識し、就労の課題だけでなく、心身の不調や家族問題なども広く包括的に支援します。

また、生活困窮者ごとに問題点を分析、評価し、その生活困窮者にとっての最適な支援を実施するのみならず、必ずしも生活困窮者が自らの状況を改善するために、支援窓口を訪ね支援を求めるとは限らないことから、潜在的な生活困窮者を把握します。さらに、支援は生活困窮者のペースに合わせ、段階を踏みながら継続的に行うこととしています。

生活困窮者自立支援制度を利用できるのはどんな人?

支援制度の対象者

この制度を利用できる人は、何もしなければ生活保護を受けざるを得なくなる可能性があり、支援によって自立の見込める人です。この制度の対象となる生活困窮者は、非正規労働者、年収200万円以下の給与所得者、無職者などの割合が高く、高齢者も含めると年間約40万人が対象になるものとされています。この中には、生活保護受給者から脱却したにもかかわらず、再度生活保護になるかもしれない方も含みます。

生活困窮者自立支援制度ではどんな相談ができるの?

生活困窮者がどのような悩みを持って、現在の状況に甘んじているのかを見ると、経済的な不安材料として、住むところがない、家賃が払えない、生活資金まで手が回らないなどがあり、社会的不安材料として、仕事に就く能力がない、家族のことで悩んでいる、社会でうまく振る舞う自信がない、病気がちで継続的な仕事ができないなどが多いとされています。

これら1つ1つを支援対象と考えて、地域ごとに設けられた窓口で専門の支援員が自立を支援するのです。

生活困窮者自立支援制度ではどんな支援をしてくれるの?

どんな支援をしてくれるの?

専門の支援員は、生活困窮者の相談内容から、相談者にあった支援プランを作ります。例えば、再就職をするために住居の確保から始めなければならないと評価した場合は、住居確保のための支援計画を策定し、地域の関係機関と連携を図りながら継続的な支援を行います。また、再就職をするために生活困窮者の自立と能力の育成から始めなければならないと評価した場合は、一般就労に向けた、支援つき就労の場の提供などを行います。

では、生活困窮者の状況に応じた支援には、上記を含めてどのようなものがあるか具体的に見ていきましょう。

包括的な相談支援

生活困窮者の状況に応じた具体的な支援をするための相談窓口として、福祉事務所設置自治体は、すべて「自立支援相談事業」を実施しています。この事業では、生活困窮者が生活保護に至る前の段階からの支援を行います。

生活困窮者一人一人に生活と就労についての支援員がつき、相談者の多方面にわたる相談に対応し、生活困窮から抜け出すための自立支援計画を作成。支援計画に盛り込まれる具体的な方策によっては、以下で解説する支援の中からいくつかの支援につなげて、相談者の経済的・社会的に自立を目指します。相談者の家庭の状況によっては、その子どもの支援事業につなげることもあるでしょう。

居住確保支援

なかなか再就職先が見つからず、家賃の支払いが困難になり、住む家を失ってしまう可能性がある場合、この生活困窮者に対しては、まず安定した住居の確保が最善の支援であると評価されると、「住居確保給付金」の支援制度を活用することが可能です。

住居確保給付金は、地域の窓口ごとに支給条件が決められています。例えば、申請日の年齢が65歳未満で、前職の離職の日から2年以内、世帯の収入合計や所有金融資産の状況が一定額以下という条件です。住居確保給付金は、これらの支給条件を満たした場合、就職活動を支援するため家賃費用の一部を給付するもので、基本的に給付期間は3カ月間、一定の要件により3カ月を2回まで延長(9カ月間)できます。

なお、どの福祉事務所設置自治体でも、自立相談事業としての相談窓口の設置と、この住居確保給付金の支援は、必ず行わなければならない施策です。

就労支援

これまで就職した職場で対人関係がうまく築けず、長期間在籍することができなかったなどの傾向がある生活困窮者には、「就労準備支援事業」として一般就労の前の自立のための訓練を行います。就労体験を通じた訓練や、朝起きてから就業が終わるまでの生活習慣を確立するためのアドバイスなどにより、社会参加の能力開発を支援します。

就労準備支援事業で一定の成果を得られた生活困窮者や、就労準備支援事業による支援の必要はないがすぐに一般就労は難しい生活困窮者には、中間的就労の場を提供する「就労訓練事業」を提供する支援もあります。この事業は例えば、非雇用型として高齢者施設で就業訓練を行うなどが該当します。

緊急的な支援

既に住居から出ざるを得ないところまできていて、所得が一定水準以下で明日の住まいもない、というような状況にある生活困窮者には、いわゆるホームレス状態が定着しないよう原則3カ月間(最長6カ月間)に限り、宿泊場所の供与や衣食の供与等を実施する「一時生活支援事業」があります。

しかし、このような生活困窮者のほとんどは、自ら福祉事務所を訪ねるということはありません。そのため、路上、河川敷、ネットカフェなどを支援員が巡回し、相談に応じることになります。一時的生活支援として、自立支援センターや緊急一時避難所(シェルター)での生活になりますが、この支援事業はあくまでも一時的避難の支援のため、この間に再就職に向けた課題の分析、評価を行った上で就労支援事業による支援につなげます。

家計再建支援

「家計相談支援事業」では、所得と支出のバランスについて無頓着な生活を続けたために生活困窮者に陥り、本人には相変わらず収支の感覚がないなどという場合、相談者の家計の収支を表などの形で可視化し、明らかになった課題を改善する支援プランを相談者の状況に応じて作成します。

ここで重要なことは、一時的に収支を可視化するだけでなく、相談者自らが家計管理を続けていく意欲と能力を身に着け、家計状況に対する気づきによって自らの生活状況を改善することにあります。そのため支援員は、一過性の対応ではなく引き続き相談者をモニタリングすることになります。

なお、相談者によっては、債務を抱えていることが考えられるため、債務の返済および滞納の解消に向けた支援、さらには多重債務者相談窓口と連携することにより、債務整理に関する支援を行うこともあります。

子ども支援

生活困窮者(多くの場合、生活保護受給世帯)は、生活に余裕がないことから自らの子どもに費やす時間も資金も不足しがちで、多くの世帯ではその子どもが成長したとき、親同様に困窮状態に陥りやすいのが実情です。

生活困窮者自立支援制度では、この状況を打破し子どもへの連鎖を防止するため、小中学生の子どもがいる生活保護受給世帯への「子どもの学習支援事業」による支援を行っています。この支援事業は、開設している自治体でさまざまな取り組みを行っていますが、多くの自治体で子どもの進路相談や、学校からの中退防止のための学習支援などが行われています。この支援事業を通じて、子どもが社会とのつながりを持ち、自分の居場所を実感できるようにさせるのです。

しかしながら生活保護受給世帯の親は、子どもに無関心でいることが多いため、支援員による自宅訪問などで、その活動を理解してもらい支援を受けるよう促しています。

その他の支援

生活困窮者自立支援法で定めた支援は以上です。

しかし、自立支援の趣旨に則したことであれば、福祉事務所を設置する自治体が独自の取り組みにより、他制度との組み合わせや関係機関との連携、あるいは生活困窮者やその子どもへの直接的な支援でなくても、地域の民生委員や自治会などの支援により間接的に生活困窮者の自立を支援することも可能です。

生活困窮者自立支援の相談はどこでできるの?

相談はどこでできるの?

自立相談支援機関の相談窓口は、都道府県および市の福祉担当部署や社会福祉協議会、社会福祉法人などに設置されています。また、支援員が巡回して相談に応じる形態もとっていて生活困窮者が相談窓口に訪れなくても相談に応じる体制がとられています。

生活困窮者自立支援の流れを教えて!

ここでは、生活困窮者が新たな就職先に就職するまでを仮定し、生活困窮者が自立支援を受けるまでの流れを改めて見てみましょう。

1. 自分の状況を把握する

自分の状況を把握する

生活困窮者自立支援制度に基づき、再就職が困難なために失業状態が長引き、預貯金が底をつき生活困窮者になってしまう方は支援を受けることができます。再就職がうまくいかない求職者は、まずは自分の置かれている状況を把握し、現状を改善する意欲を持ってこの新しい制度を利用することで突破口を開くことができるでしょう。「失業したらハローワーク」と同様に、「再就職のチャンスを広げるなら福祉事務所の相談窓口」という認識を持ちたいものです。

2. 自立支援相談窓口に相談に行く

自立支援相談窓口に相談に行く

相談窓口を訪れると、支援員と呼ばれる専門の担当者は相談者が置かれている状況を把握し、そこから個別具体的な支援の可能性をイメージします。そして、生活困窮者自立支援法の下で、相談者本人の主体性を重視しながら分析、評価を行い「自立支援計画」を作成します。

なお、自立支援相談には、福祉事務所設置自治体の窓口での相談のみならず、支援員が巡回してその場で話を聞くことも含みます。

自立支援計画は支援調整会議による調整を経た上で、具体的な支援に移ります。今回の例では、すぐには一般就労が困難な相談者を仮定し、就労準備支援事業から取り組むものとします。

3. 就労に向けて準備をする(就労準備支援事業)

就労に向けて準備をする

就労準備支援事業では、就労支援員と呼ばれる担当者が、相談者の就労意欲の喚起から、必要に応じて履歴書の作成、面接対策まで幅広く支援します。就労準備支援が必要な相談者は、多くの場合、生活面での自尊感情や社会面での自己有用感を喪失している傾向にあるため、就労支援員は、その回復、醸成を図りながら進めることになります。

そして、ある程度進んだところでハローワークでの求職に、就労支援員が同行訪問も行います。この段階で一般就労が可能であれば、再就職に向けて計画を進めます。就労支援員は、相談者に寄り添ったこれらの支援と、再就職後のフォローアップまで対応してくれます。

困ったときは生活困窮者自立支援制度の相談窓口へ

今回は、平成27月4年から施行されている生活困窮者自立支援制度についてご紹介しました。

働きたいのに働けない、生活に困っているなど、何か悩みを抱えている場合、自立支援相談機構に相談してみましょう。

まだ新しい制度のために知る人も少なく、自治体の対応もまちまちなところがありますが、失業保険などを支給する求職者支援制度と対をなす制度として、浸透、定着、発展をすることで社会保障の幅が広がることを期待したいものです。

大山 敏和
大山 敏和

CFP(R)認定者/社会保険労務士/年金アドバイザー
アクシス社会保険労務士事務所代表

2014年8月CFP(R)認定、ファイナンシャルプランナーとしてお客様個人の資産状況分析、および資産形成・運用ノウハウのアドバイスならびにご提案を長期ライフプランとして提示。将来、老齢年金受給世代になったときに豊かに暮らせるライフプランの構築をターゲットに現役世代から見据えるライフストラテジーの確立を応援している。

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