欲望の果てに

三菱UFJ証券顧客情報売却事件

証券会社には多数の個人情報が保管されています、それらの管理は今世でどれだけ重大かはあえて言うまでもないでしょう。仮に漏洩することになれば、損害も生じることには生じるでしょう。ですがそれ以上に証券会社と投資家との間に築かれるはずの信用が失墜することこそ、最大のデメリットといえる。情報の管理はIT化が促進された現代では当たり前なこととして認識されていますが、それでも危機管理が薄い人もいるでしょう。安易に情報を流されて困ったことに陥るのは誰でも面倒だ。筆者も学生時代、何故か勝手に名前が一人歩きをして誰とも知れない人間から声を掛けられるという、面倒なことを経験したことがある。

情報漏えいは企業にとって最大の汚点であり、生命線が断ち切られてしまう恐れも十分にある爆弾でもある。ただ個人情報を高く買取る業者もおり、それらに売り飛ばせば少なくても実入りは入るとも言える。もちろん個人情報保護法違反となるわけだが、数年前に三菱UFJ証券に勤めていた従業員がそんな蛮行に及んでしまったのです。後のこの事件のことを『三菱UFJ証券顧客情報売却事件』と呼ばれるようになるが、何があったのでしょう。

事件の概要

まず事件についてですが、当時勤めていた男性従業員は会社にあった個人情報を売り飛ばしたという。売り飛ばす事もそうだが、問題はその数だ。何と証券会社として管理していたほぼ『全ての顧客情報』を買い取っている業者に売り飛ばしてしまったというのです。一人二人もアウトですが、管理していた情報はおよそ150万人にも及んでおり、さらには企業情報も120万件以上を売り飛ばしたという。

正直桁が違いすぎる売却数と言えるでしょう、確実に目的も自分本位なものであるのはこの部分だけ見ても間違いない。実際、男性は売り飛ばした目的として金銭目的であることを明かしており、故意であることも明白となる。

証券会社が事態を把握したのは企業に寄せられる苦情の電話からだ。本来で回るはずのない情報により、何かしらの被害を受けた顧客たちからの問い合わせに漏えいしたのではないかと思って社内調査を始める。すると簡単に犯人が判明し、犯人である男性を問いただしてみると売却した事実を認めたという。彼は懲戒解雇され、さらに警視庁に逮捕されたものの事態はまだ終わっていなかった。

三菱がUFJ証券が支払った代償

犯人逮捕後、三菱UFJ証券はすぐさま顧客情報の回収に動いたが、回収できたのは98社に転売された情報の内わずか28社だけだった。信じて情報を託していた顧客たちからの信用に対しては、1万円のギフト券を郵送するなど後始末に追われる。だがこの問題で男性がいとも簡単に個人情報を簡単に取得できるくらい、ずさんな社内体制とセキュリティが露見したことで、その地位は社会的に見ても堕ちるところまで堕ちてしまうのだった。

この事件により代償を含めた損害は約70億円にまで膨れたと言われている。今の今まで築いてきた信用は戻ること無く、顧客たちに頼られる事も無くなってしまった。男性の起こしたことは許されるものではないが、個人情報というものについてそこまで危機感を持っていなかった時代でもあったのが不幸だったのかもしれません。ですが流された当人にすれば人間不信になってもおかしくない出来事だ。管理を怠った三菱UFJ証券にも少なからず事件を引き起こした因果は絡んでいると見ていいだろう。

動機について

では男性はどうして個人情報を売買したのか、その動機について考えてみる。そもそも男性はSEとして入社していたこともあり、人よりも卒と無く情報技術に対する扱いには長けていたはずだ。個人情報についてもその重要性を理解していてもおかしくないのだが、勤務してから事件を起こすまで心労を患っていたという。

入社してから続くサービス残業、その不満を少しでも解消するためにキャバクラ通いをしていたというのだ。ただそれも金銭的なものが追いつくはずもなく、気づけば借金が溜まるところまで言ってしまった。なんとかしなければと男性が考えたのが、個人情報を売却すれば借金なんて簡単に返せるはずだとする、そんな安直なものだったという。個人情報を高く買い取ってくれるはずと思っていた男性に待っていたのは、顧客情報と企業情報を合わせて僅か『30万円程度』にしかならなかったのです。

安すぎた売買なのは言うまでもない、そして売られた人にすればトコトン不幸であり、情報管理をしっかりしていなかった三菱にすれば最悪としか言いようが無い状況だ。労働に対する不満から生まれた借金を返すため、個人情報を売買しても借金を返せなかったのだから運が無い以前に自業自得の展開と言える。ただ被害の規模は男性よりも会社の方が大きすぎる爪痕を遺ったので、ある意味男性にすればいい気味だと皮肉る結果になったのかもしれません。