過去に起きた証券事件

ジェイコム株大量誤発注事件について

ここまで話してきた証券は日本国内ではないが、日本にも少なからず影響をもたらす事件となっている。VWの不正問題については予断を許せない大問題といえるため、見過ごせないので注意したい。では日本国内で起きた証券に関する事件といえば何かと考えてみると、真っ先に思い当たった2つの事件を紹介していこう。

まず最初に紹介するのは、こちらは企業そのものには過失はないのだが、みずほ証券が誤ってしまった『ジェイコム株大量誤発注事件』についてだ。この事件が起きた当時、筆者は色々忙しい身の上だったので、あまりニュースを見ること無く過ごしていたので当時の記憶はなかった。今回は機会もあったので調べてみたものの、正直な話この件はどっちもどっちだろうという点が否めない。この事件で被害者ともいえる企業の株がありえないことになり、これ見よがしとしてこの問題に乗じて多数の証券会社、さらには投資家がボロ儲けをしたという話がある。

その中には個人投資家で、『ジェイコム男』などと呼ばれていた人が名を馳せたというが、彼の行動に賛同できるかどうかというのは微妙なところだ。投資家という立場で考えるなら成功と言えるでしょうが、それを是とする術は筆者にはない。

そもそもこんな問題がどうして発生してしまったのかについても探っていくと、危機管理能力の有無を問いたくなる顛末となっている。

従業員の不始末で

事件のきっかけになったのは当時上場したばかりの企業である『ジェイコム株式会社』だが、同名企業が多数存在しているがこの企業は人材派遣業を主とする企業となっている。そんな上場したばかりの株式を当時担当だった男性社員が注文しようとコンピューターで入力する。これが全ての始まりでもあり、原因でもあり、ある意味キッカケになってしまった。

本来注文するはずのない値段で設定したことで、突如として大量売り注文を受けたことで株式そのものが急落して、市場が始まってから30分余でストップ安57.2万円という状況になる。この注文についてネット上でも何が起きたのかと憶測が飛び交う中で、誤発注なのではないかと気づく一方で株価の急落によってもたらされた混乱に惑わされた個人投資家が保有株を非常に安値で売り飛ばしてしまうなどの問題が続発する。

何というか、始まってからの時間は投資家たちの青ざめた顔や、慌てること無く冷静に対応が出てくるのを待とうとする人もいたとすると、翻弄された投資家たちには色々お悔やみを申し上げておこう。そして間違って入力した男性は、入力してから約90秒後に自分がなにをしたのかを理解する。取り消し作業をしようとするも、コンピューターは指示を受け付けなかったとのこと。こうなったらと凍傷と直結した売買システムそのものを凍結する手段に出るが叶わず、東証に連絡して止めてもらうように依頼するもみずほ証券側から手続きするようにと言われるだけで拒否されてしまう。

結局、この騒動で投資家を翻弄し、株式を混乱したことに対する非難を受ける事になってしまい、散々たる有様だったという。この事件を知って思ったのは、有価証券なんてしていなくて本当に良かったと思ったくらいだ。

何をどうミスしたのか

ちなみに男性職員が入力をミスしたとのことだが、どんなミスをしたのかを見てみる。本来注文されるべき値段と株、これが完全に入れ替えてしまったというが、良く間違いと気づかなかった事のほうが驚きで仕方がない。どのように入力したのかというと、

正:61万円1株売り

誤:1円61万株売り

上記のような誤った入力したとのこと。入力ミスは誰にでもあると言ってしまえばそれまでですが、間違ったまま入力してそのまま受け付けるようではハイテクの名折れだ。どういうことかというと、実は注文内容に異常がある場合にはエラー画面が出てくるシステムが内蔵されていたのです。この注文に対しても警告する画面が表示されたのですが、間違えていないと自分を信じきってしまい、スキップしてしまったというのだ。

これはミスは誰にでもあるというレベルの間違いでは済まされないでしょう、警告が促されている時点でなにか間違えているのではないかと思えば、事態は展開されることはなかった。人的ミスとはいえ、入力ミスに対する警告すら遮った男性の過失は大きい。

東証側にも問題がある

ただこの問題では東証側にも問題があると判断されている。そもそも異常な売り注文が大量に殺到している時点で、何かが起きているとすぐに判断できるはず。幸いにも男性職員が間違いに気づいてから適切な取り消しを行っても入力を受け付けなかったため、直接取り消してくれるようにと依頼しても邪険にするだけだった。これらの対応に問題はないとされていたが、そもそもシステムそのものに不具合があったことが判明したという。

この件について東証はシステム開発を行った企業に損害賠償請求をしたとのことだが、株式の異常事態をまるで他人事のように眺めている対応には疑問を覚える。自分には関係ない、東証もあくまで管理しているだけなのでそれ以上でもそれ以下でもないのかもしれないが、もう少し出来ることがあっただろう。

取り返しの付かない事態に

結局、この騒動で無駄に有名になったジェイコム株式会社にとっては名前が広まったが、最終的に巨額の損害を受けたみずほ証券にとっては洒落にならない。この事件で何と404億円もの損害を受けたとして東証を相手取り訴訟を起こしていた。その最終判決が2015年9月にみずほ証券の言い分が通り、東証がみずほ証券側に107億円の損害賠償を支払うことで落ち着いた。

考えさせられる問題であると同時に、株式の操作を職員の操作1つで混沌とした状況が生まれてしまう、そんな危険性を感じた事件だ。